今年も3月頭より仕込みが始まり無事終えることができました。
私どもでは一年で一度のこの時期しか仕込みを行いません。
この時期の仕込み作業について具体的に少し触れさせて頂きます。
弊社では熟成期間内に於いて昔のままの製法にて醤油づくりを行なって
おります。古式製法と申していますがほとんどが人の手によるものです。
仕込みを始めるにあたって、弊社独自製法であるまず【塩吊り】という
塩水を作る作業から始めるのですが、これは樽に水を張りそして木棒に
吊るした麻袋に塩を入れます。
我々蔵人は、塩袋を肩に担ぎ上げ、梯子を登り、麻袋に入れます。塩は
麻袋を通し水に触れ、序々に溶け出して塩濃度があがります。塩は約5日
かけて少しづつ溶かしていくのですが沢山の桶に塩吊りをかけるのは、
さすがに重量のある塩を不安定なバランスで上がったり降りたりの数トン
分となるとかなりこたえます。
また毎年のことながら【仕込み】では、毎年の大豆の水分含有量の状態で、
蒸し具合いも変わってくるもありますし、小麦の煎り具合、麹の温度管理
など毎年毎年まったく同じ状況ではないのでより美味しい醤油作る為には
いろいろと気を使う作業です。
その塩がとけた桶に麹を樽にほりこむ際も、手作業なので麹を麻袋に入れ、
だいたい40キロくらいだと思いますがそれを担ぎ上げてから樽にほりこみ
ます。その後、櫂棒でひたすらなじませます。これらすべてはその時々の
状態を見極めながら時には作業手順を変えなければならないこともあり、
体力だけでなく非常に神経を使います。
1日の作業を終えた頃には腕も上がらずといった状態で夕食時にはご飯食
べる手が震えていることもあります。
やっと仕込が終わりましたので、これからの作業は諸味の味、香りなどで
各桶ごとに判断し、またひたすら【撹拌】です。その後は梅雨が来て、発酵
の手助けに入り醤油育ての始まりです。
仕込んだ諸味も気温が関係してきますが納得できるような状態になるよう
努力いたします。
3年後に美味しい醤油を作る為に我々蔵人は汗をながして頑張っております。
どうぞこれからも丸中醤油を宜しくお願いします。
丸中醤油職人 主任 神野明