◆黄葉の候、ますます御健勝のこととお慶び申し上げます。◆
本年は9月いっぱいまで夏が続いたような残暑が続き、「もろみ」との格闘も約一ヶ月遅れようやく熟成に入りつつあります。今年は、台風も少なく紅葉の時期も遅れ、季節はずれの桜が咲き本当に気候がおかしくなっていると感じますね。
さて、今回は少し「しょうゆ」の価格についてお話したいと思います。商品価格の風俗史の書籍によりますと、「しょうゆ」は、江戸時代の初め頃は、なんと米の価格の3倍から4倍で売られていたそうです。明治時代には醤油が約32銭、いわゆる男性の散髪代が約15銭とあり、当時は散髪代の凡そ2倍程度の価格で 「しょうゆ」が売られていたようです。
ところが昭和40年ぐらいになりますと、醤油は凡そ180円程度、 散髪代は300円程度と散髪代の価格の方が倍近くになっています。 現在では、散髪代は3600円程度です。一方、「しょうゆ」は、同じ40年間で凡そ2倍程度にしか価格は上昇していません。 理由は、原料が変わり、即醸という方法で(醤油を造る期間を短縮し)、機械化され大量生産が可能な設備による醤油製造に変わってしまったためです。
現在500ml入のペットボトルのお茶が150円程度、ミネラルウォーターは120円程度で販売されており、醤油は倍の量の1ℓで約130円程度で販売されています。醤油が、お茶や水より安く販売されているのです。
江戸時代末期から変えていない変わらない伝統的な製法と契約栽培無農薬原料でつくる丸中醤油ではとても考えられない価格です。
常々、私ども丸中醤油の「しょうゆ」がお酒より高くてお客さまには申し訳なく思っております。醤油は天然醸造とはいえ、静置発酵とは違い櫂入れなどの作業を頻繁に手を入れてやらなければ良い味になりません。
丸中醤油御愛用者様は『煮物にすると一番味の違いがわかる、子供が汁まで食べる』などと言って喜んでくださいます。又『香りが違う味の旨みがちがう、薄めても味が伸びる』と切り替えてくださった蕎麦屋さんもいらっしゃいます。
時代が変わっても変わらぬ味を届けてまいりたいと思います。