地食がおもしろい “伝統的な醤油は建物と風景を受け継ぐ"
食総合プロデューサー金丸弘美
滋賀県愛知郡愛荘町にある丸中醤油は、屋根瓦で漆喰の壁に囲まれた二百年の歴史をもつ蔵。
この蔵のことを知ったのは、鰹節の老舗で日本橋にある「にんべん」の専務秋山洋一さんからで、
発酵醸造学で知られる小泉武夫先生との旅で丸中醤油と出会ったという。~(省略)
丸中醤油は、とてもおだやかで美味な、脇にまわって主役の素材を立ててくれる控えめで、だがしっかりとした主張のある醤油である。
丸中醤油は、蔵に住んだ菌を保持するために、家をそのままに保つ形で改修して、昔ながらの樽作りでの三年仕込みの、国産大豆での醤油を造り続けている。家屋は有形文化財に登録されている。周辺はかつて宿場として栄えたところで、金剛輪寺を始め情緒豊かな建造物と景観がいくらもある。周辺をぐるりと巡ると丸中醤油の存在は、景観にあって、実に落ち着いてどっしりと見えるのである。~(省略)
伝統の技法を継ぐということは、建造物や周辺の風景も残すということなのだ。伝統の醤油の風格を改めて知った醤油蔵の旅だった。